日本の歴史や礼儀作法のまとめ

日本の歴史や礼儀作法など日本文化にまつわる記事を書いていきます。

葬儀前に行う湯灌の儀式とは?流れや費用、立ち会う際の服装を解説!

葬儀前の儀式として行われる湯灌とはどのようなものなのでしょうか?故人を安らかにお送り出すには湯灌ではどんなことに留意が必要でしょうか?湯灌はどんな内容をどんな手順で行うのか、葬儀前の湯灌にはどんな服装で立会うかを含め留意する点をご紹介します。

 

葬儀での湯灌について

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亡くなった方の遺体を棺に納める前に、お湯で遺体を洗い清める儀式を湯灌(ゆかん)といいます。

日本では古くから執り行われている葬儀前の儀式です。
地域によってその内容や手順が異なり、例えば、納棺(のうかん)までを含めて湯灌と呼ぶ場合もあります。

いざ、故人を送り出そうと葬儀の内容について葬儀社に相談した場合、湯灌を行うかについて確認されることがあります。
湯灌の内容やしきたりがわからなければ、その場で判断がつかず、回答に窮することにもなりかねません。

 

  • 湯灌とはどんなものか
  • 湯灌の手順や流れ、費用の目安
  • 湯灌に立ち会う際の服装など留意点

湯灌をはじめ葬儀前の儀式についての基本的な事項を知っていれば安心です。
ぜひ最後までお読みください。

 

葬儀前に行う湯灌とは?

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湯灌では、故人が亡くなられてから納棺までの間に、遺体を洗い清めるのですが、具体的な湯灌の儀式内容や手順は地域によって異なります。
例えば、浴槽を用意して入浴をするやり方、たらいや桶などに用意したお湯で拭き清めるやり方など清め方もさまざまです。

湯灌の儀式では、故人の遺体に直接触れることになるため、故人にごく近しい身内のみで執り行うことが通例です。
また、子どもさんの参列については子供さんの気持ちへの影響を考えて決めましょう。

昔は、自宅で看取ることが多かったことから、湯灌も自宅で行っていたそうです。
浴槽の準備やお湯の後始末などに関するしきたりの存在など、かなり大変な儀式でした。
そのため、湯灌の場所を提供するお寺もありました。

最近では、葬儀自体を斎場で執り行うことが増えてきています。
それにともない、湯灌も斎場で行い、儀式の進行は湯灌師と呼ばれる納棺の専門家にお願いすることが多くなっています。

 

湯灌を行う意味

湯灌は以下のような意味を持つものです。

  • 故人を送り出すにあたっての宗教的な意味合い

    湯灌によって清めることで安らかに来世に向かうことを願います。
    最後の入浴を行うことで故人を癒し、さらには、遺体をきれいで安らかな姿とすることで遺族の悲しみを癒すために行います。

  • 衛生的な意味合い

    病気や事故などで亡くなった場合は、その影響が残っている場合もあります。
    そして、人間の身体は死亡の瞬間から腐敗という変化が始まります。
    納棺に際しては、遺体をできるだけきれいな状態に保つための処置です。

 

湯灌の由来

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身を清める、あるいは、穢れを落とすために水で身を清める禊という儀式は古代の日本から行われていることで、日本書紀などにも記述があります。

仏教では、出家する時に水を頭にそそぐ灌頂(かんじょう)という儀式を行います。
そうした儀式を始まりとして仏教でも葬儀で湯灌が行われるようになりました。

仏教が日本に伝来し、その影響を受けて葬儀で湯灌が儀式化されたと考えられています。

儀式においては、直接に故人に触れることから、地域ごとに色んな風習を生み出しています。

水で身を清めるという儀式は日本人にはなじみ深いものです。
死者への湯浴みはあの世のへの旅立ちの準備です。
さらに、赤ん坊がこの世に生まれて産湯に入るように、故人の来世での生まれ変わりを願う儀式としても行われてきました。

 

 葬儀前の湯灌の流れ

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湯灌は自宅でも行うことが可能ですが、最近では、斎場などで湯灌師と呼ばれる納棺の専門家が式の進行および実際の作業を行います。
もちろん、遺族も参列するだけではなく、儀式では手を動かします。

湯灌という儀式の手順を準備から納棺までを順を追ってご説明します。
基本的には、湯灌師が儀式を進めますが、ご遺族やご親族も手を動かすポイントも示します。

 

湯灌の儀式手順

 

  • 準備

    まず、浴槽の準備が必要です。
    自宅で行う場合には介護用の浴槽などを使います。
    斎場で行う場合は、斎場側で湯灌師が準備してくれます。

    そして、故人を湯浴みができるように衣服を脱がせます。
    故人の身体が露わにならないようにバスタオルや布などでくるみます。
    これも湯灌師が行ってくれます。

  • 口上

    湯灌師が開始の口上を述べで湯灌の儀式が始まります。

  • 逆さ水

    まず、浴槽に水を張って、その中にお湯をいれて温度を調節します。
    これはお風呂を沸かすのと逆の手順であり「逆さ水」と呼ばれます。

    遺族が故人の足元側から始めて胸元側へ向かってこのお湯をかけていきます。
    お湯をかけることを洒水(しゃすい)といいます。

    洒水は故人との関係が近い人から順に行います。
    湯灌師が適時指示してくれますので指示に従って行います。

  • 逆さ事

    故人のお身体を洗います。
    これも通常とは逆の順序となるように、左の足元から洗い始めて顔へと向かいます。

    このように、湯灌では生前とは逆の順序で儀式を進行します。
    これを「逆さ事」といいます。

    身体を洗い終えたら、洗髪や髭剃りも行います。

  • 身支度

    故人のお清めが完了したら、故人の身支度を行います。
    死化粧とよばれるお化粧などによりお顔を整え、脱脂綿を詰めるなどして身体が汚れないようにします。
    そして着替えを行って白い死装束に身支度します。

  • 納棺

    故人を棺に納めます。
    棺にはドライアイスも入れて故人の身体を守ります。
    また、副葬品があれば一緒に納めます。

 

湯灌にかかる時間

湯灌にかかる時間は、おおむね1時間程度を考えておくとよいでしょう。
着替えや納棺などを含める場合には、さらに時間を要します。
余裕を見て、1時間半以上はかかると考えておきましょう。

 

湯灌に立ち会う際の服装

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湯灌には故人にごく近い遺族や親族のみで執り行うことが通例です。
したがって、自宅で湯灌を行う場合は平服でも問題ありません
遺族や親族は納棺までは色々なことをこなす必要がありますので、喪服には納棺後の通夜までに着替えることになるでしょう。

斎場で湯灌を執り行う場合は、喪服で立ち会うのが無難です。
平服でも問題はありませんが、納棺や通夜までの時間的な余裕を考えると、早めに喪服に着替えることになるでしょう。
また、斎場といういわば公共の場所では、納棺前後の時点でも、遺族や親族以外の方にも合う可能性があります。

 

湯灌にかかる費用はいくら?

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湯灌の費用は、葬儀の費用には含まれずにオプション費用として別途支払うことが多いです。
葬儀社からは湯灌を行うかの問い合わせがあると思いますのでその場でよく確認しましょう。
湯灌にかかる費用は、湯灌として執り行う内容によっても異なります。
また、葬儀社によっても異なります。

相場としては、5万円から10万円といわれています。
葬祭場でお清めと身支度を行うのであれば5万円前後といわれています。
自宅に浴槽を持ち込んで行う場合はさらに費用が増えることになります。

それなりの費用がかかりますので、いろいろとやってあげたいと思うのは人情ですが、葬式全体のバランスも考えて内容を決めましょう。

 

湯灌以外に葬儀前に行うエンゼルケア

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お湯を使う湯灌以外にも、故人をあの世へ送り出すための儀式があります。
病院で看護師などが行うこともあることからエンゼルケアとも呼びます。
以下では、例として、末期の水と死化粧をご紹介します。

 

末期の水

故人の臨終に立ち合った人が全員で故人の口に水を含ませる儀式を末期の水と言います。
故人との別れを確認するためとも言われています。
順番や道具などに決まりがありますので、医者や葬儀社の方の教えにしたがって執り行います。

 

死化粧

故人の顔や髪をお化粧道具などを使って整えてきれいにすることを死化粧(しにげしょう)といいます。
化粧道具や脱脂綿などを使って、お顔のやつれなどを隠して、穏やかなお顔となるように整えます。
また、最近では、男性の場合であっても化粧を施すこともあります。

 

葬儀での湯灌のまとめ

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湯灌とはどんなものかをその意味や由来を含めて説明してきました。
これにより湯灌のイメージをお持ちいただけたと思います。

最後に葬儀前に執り行う湯灌のまとめを以下に示します。

  • 湯灌は故人をあの世へ気持ちよくお送りする気持ちから始められたお清めの儀式です。
    故人の身体を清潔な状態に保つという衛生上の意味もあります。
  • 湯灌の儀式は湯灌師という専門家が進めますが、遺族も立ち会うのみではなく洒水(しゃすい)などを行います。
  • 湯灌の儀式内容は地域のしきたりや風習によっても異なります。
    湯灌師の指示に従いましょう。

故人をなるべく安らかにあの世へお送りしたい、葬儀に際してそうした気持ちを表わす参考になれば幸いです。